Leprous / Malina
ノルウェーのプログレッシヴロック/メタルバンドの5作目フルレングス。
バンドの頭脳EinarがEmperorのIhsahnの義理の弟だったり、他のメンバーもIhsahnの音楽教室の生徒だったりしたことでも有名なバンドでした。
実質、前作くらいまではIhsahnや再結成Emperorのバックを務めたりもしていましたが、バンドの編成を変えることも契機になってなのか、今作から完全に独立したと言えます。
彼らはプログレッシヴメタルの中でもDream TheaterよりはPorcupine Tree関連の系譜を受け継ぐ音楽性だったと認識していましたが、それも前作で脱却。
独創的でイマジネイティヴに溢れた作風はいよいよ大爆発に至り、今作が生まれたと思います。
控えめに言っても、今作は凄まじい完成度を誇ります。
前作のデジタルな要素はほぼ完全に消え失せたものの、前作の持っていた暗い浮遊感は前作よりも強調されており、幽玄な雰囲気は前々作のものをすくい上げた印象。
小刻みに刻まれるリフでメタリックな攻撃性を見せつけながら、小気味良いビート感はまるでFlying Lotusのような洒落っ気を出しています。
さらに優美極まりないシンセワークやストリングスはクラシックからの影響を隠さず、元々高い歌唱力に定評のあったVoはほとんどオペラの領域です。
全ての要素がVoを際立たせる脇役にも、Voと競演する主役になり得ており、この均衡はますますスリリングになっています。
また、アルバムの構成として様々な要素を内包しながらもM-11“The Last Milestone”に収斂していきます。この曲はバンド演奏を排除しストリングスをバックに朗々とした歌唱を響かせる曲なのですが、決してVoのソロワークという体ではないのですね。
いないはずなのに、何故だかバンドの息遣いを感じさせる不思議な聴き心地を感じさせます。
M-1“Bonneville”やM-4“Captive”にもあるようなカッティングの刻みは凄く職人っぽいし、M-7“Mirage”の弾性のあるリフで柔らかく耳を包むような曲もあり、アルバム自体が技で聴かせてくれるんです。
それでいて、ただ技巧を見せつける作品にならず、一定以上の聴きやすさも備えてくれています。
幽玄で儚く甘美な傑作と言うより他ないです。
1. Bonneville
2. Stuck
3. From The Frame
4. Captive ★
5. Illuminate
6. Leashes
7. Mirage
8. Malina
9. Coma
10. The Weight Of Disaster
11. The Last Milestone
12. Root
(2017,InsideOut)
M-12デラックスVer、日本盤ボーナストラック
Time/62:56
※輸入盤デラックスはデジブック仕様でした。
Score:9.7/10